ITコスト削減に向けた方法論とその実践 第2回:ITコスト削減の推進方法

前回お話しした「ITコスト削減」の基本的な考え方を踏まえ、今回はCDIソリューションズ(現アクティベーションストラテジー)における「ITコスト削減」への具体的なアプローチ法についてお話しします。

「ITコスト削減」が成功するか否かは、前回のコラムでお話しした上図の「第1段階」つまり「いかにサービスレベルを維持しながらコスト低減を実現するか」にかかっています。
将来、必要に応じて再構築を行う際、あるいはITマネジメント体制の構築の際に、ITが筋肉質になればなるほど大きな自由度を確保できるため、この第1段階では十分な調査と議論、そして明確な数字を伴うコストダウン計画を立案することに重きをおいています。
具体的には、フェーズ1としてコストダウンの余地がどの程度あるのかを把握するための診断を実施した後、必要に応じた詳細調査や議論を重ねながら、コストダウン実践計画を立案(フェーズ2)し、実行・モニターを行う(フェーズ3)、という流れです。
また並行して、診断により浮かび上がった課題や問題点を基に、適切なタイミングを見極めながら、ITマネジメント体制の整備・確立を図ります。(下図)

まずは、現状の実態を正しく把握するために行う「コストダウンの診断」を、①システム・業務機能の実態把握、②現状の課題抽出と将来像の作成、③コストダウン計画の策定、という下図の3つのステップにより進めます。

【 ステップ1:既存システムの実態把握 】

コストダウンを図るには、ユーザー視点からのパフォーマンス評価が重要であると前回のコラムで述べましたが、CDIソリューションズ(現アクティベーションストラテジー)はシステム評価にあたり、機能、活用度等からなる評価軸を設定しています。
これらの軸による多面的な評価によって、既存システムの過不足が明らかになり、実態を正確に把握することが可能なのです。
また、これらの評価と併せてITコストについても分析を行います。
ITコストは、その総額と内訳を特定することが、最初の大きなチャレンジとなります。
先に述べたように、ユーザー部門のIT管理にかかる工数を含めるか否か、子会社独自システムのコストはどう扱うのか、といったさまざまな状況があるため、「ITコストとは」の定義から確認あるいは議論していく必要がある場合がほとんどだからです。
扱うコスト総額の枠を定義した後にコストを集計し、さらに必要に応じて詳細化あるいはクロス分析を行い、先に見た評価軸との対照によってシステムのパフォーマンス対コストの実態を明らかにしていきます。
そうすると、多くの企業において次のような状況に陥っていることが明らかになります。

  • どこにどんなアプリケーションシステムがあるのかが明確になっていない
    • 社内資料が古く、現状を表現していない
    • 特定のシステムに対し、ユーザー部門とシステム部門とで呼び方が異なる
    • 同じシステム名でも、例えばサーバーを指す場合や業務画面を指す場合等、別の対象を指していることがある
  • IT に関わる人員・工数が不明確
    • ホスト、サーバーといったハードウェア単位で維持管理業者に委託しているため、個別システムに係る工数が把握できない
    • ユーザー部門で独自に構築したシステムの開発~維持管理にわたる工数が把握できない
  • IT に関わる金額の把握が困難
    • 情報システムの課金・配賦ルールが不明確、または複雑
    • 「外部委託費」「物品費」等の費目からITに係るコスト分を特定できない

このように、調査の対象そのものの特定が困難であることもしばしば起こっているのが実情なのです。

【 ステップ2-3:将来像の策定~システム機能マップの作成 】

業務をムリ・ムラ・ムダなくサポートするシステムとはどのようなものか、この青写真を描くことがITコスト削減の具体策策定のためには必要です。
コスト高と認識している企業の場合、業務プロセスとシステム機能、さらに要するコストの間でアンバランスが生じていることでしょう。
このバランスをスリムな形で確保することが、ITコスト削減への取組みといえます。
その第一歩として、業務機能をベースにした「システム機能マップ」を作成します。
これは業務とシステムのいわば青写真であり、どの業務に対してどんなシステム機能がカバーすべきかを示します。
この際、シンプルなシステムで業務をカバーできるよう、必要に応じて業務プロセス自体の見直しも行います。
作成された青写真に現行システムを投影させると、システムの過剰・不足・重複等が明らかになります。
この対比から、具体的なシステム削減領域と目標数値を抽出・特定していくのです。

こうして、フェーズ1で現状と将来像が明らかになったら、フェーズ2で具体的なコストダウン施策の洗い出しを行います。
そのためには、コストダウンの余地をたくさん見つけることが必要ですので、まず分野と段階別に枠を設けて検討すると良いでしょう。
次に、たとえば「契約更新の停止」といった具体策により、それらに目標数値や金額を設定します。
肥満解消への取り組みでいえば、「ランニングを毎朝1時間」「揚げ物とラーメンは月2回に減らす」といった、具体的な目標を設定することです。
施策の中には、たとえば未活用システムの処分など費用が発生する場合もあります。
それを、「捨てるにもカネがかかるから」という理由で放置するケースを多く見かけますが、この積み重ねがシステムの混乱や増殖を招いていることを認識しなければなりません。
そして、それぞれのコストダウン目標達成に向けた各取組みを統括する「コストダウン計画」を策定したら、個々の取組みごとに担当責任者を特定し、スケジュールと具体的な作業計画を具体化します。
あとは、その計画に沿ったコストダウンの実施(フェーズ3)です。全体の進捗状況をモニターし、プロジェクト管理の視点から目標達成までのコントロールを行います。アイテムによっては部門横断的なプロジェクトの編成が必要な場合もありますが、そういった場合も含めて必要工数や費用の見積りとコントロールを行い、常にプロジェクトとしての費用対効果を管理していくことが重要です。

今回は、ITコスト削減の推進方法についてお話ししました。
次回は、ITマネジメント体制の整備・確立のお話と、実際に取り組んだITコスト削減の事例をご紹介します。

CDIソリューションズ(現アクティベーションストラテジー) シニアディレクター
森田 克己(もりた かつみ)